翻訳:構文・演習
ヨーク大学日本語 科三学年読解教材
第七課 「翻訳」:構文と演習
Lesson 7 Translation: Structure & Exercises
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構文
① ...仕儀となる
             'The
            outcome ended up .....' 
1. 色々事情があって、なかなか終わらせることが出来ず出版社にはずいぶん迷惑をかける仕儀と
           なった。 
2. うまくいくはずの商売が思うようにいかず、多大の借金を抱える仕儀となった。
3. 代わりの人が見つからないからと、再三再四口説かれて、結局その大学で教える仕儀となった。
② 生半可に  ...(出来)ない
             '....
            cannot do ..... in a half-baked way'
        
1. 生半可に翻訳など出来ないという感じを強くした。
2. 生半可に人の喧嘩の仲裁などするべきではないとつくづく反省した。
3. 友人が事業に失敗したのを見て、生半可に会社など作れないと思った。
③ ...ことが ある人なら、誰しも  ...こと で
          あるが、...
            'this is
            something that anyone who has ....., but ....' 
        
1. 翻訳を手がけたことがある人なら、誰しも経験することであるが、...
2. 大きな病気をしたことがある人なら、誰しも痛感することであるが、健康はまさにかけがえ
のないものである。
3. 外国語を勉強したことがある人なら、誰しも思い当たることであるが、言葉の勉強は、やれ
ばやるほど深くなっていくものである。
④ ...はもとより、...なくし ては ... 不
          可能
            'it is
            not possible without not only ..... but also ....'
        
1. 翻訳は、二つの言語はもとより、かなりそれぞれの文化に造詣なくしてはほとんど不可能で
あると言える。
2. 外国語指導は、言語学の知識はもとより、異文化間の理解なくしては、不可能であろう。
3. 遠隔教育は、コンピューターの知識はもとより、ネットワークの理解なくしては、不可能で
ある。
⑤ かなり...人にとっても ~ は容易ではない
            'Even for
            those who are quite ...., ~ is not an easy task' 
        
1. 両言語・文化にかなり精通している人にとっても、翻訳は容易な仕事ではない。
2. かなり日本語が話せる人にとっても、通訳は容易な仕事ではない。
3. かなり経験のある人にとっても、国際会議を組織するのは容易な仕事ではない。
⑥  ...ほどであるから、...であ
          ろう
             'As
            ..... to the extent that ...., probably .....'
        
1. 「誤訳」という本が出るほどであるから、いちいち翻訳書を当たってみたら、誤訳の数は
限りなくあることであろう。
2. 「三高」という言葉が出来るほどであるから、日本人の若い女性の考え方はみな似たり寄
ったりであろう。
3. 「受験地獄」と言われたほどであるから、昔の受験競争は大変だったのだろう。
⑦ ...は当然としても、~ まで も ...と い
          うのは ... ない
             'One
            can take .... as a matter of fact, but to the extent that
            even .... one cannot ....'
        
1. 明らかに差別用語であるものは、使用を差し控えるのは当然としても、それらが出てくる古
           い書籍までも、この基準で改定しようとする動きにはついていけない。 
2. 自分が罰を受けるのは当然としても、関係のない友達までも、責任を取らせようというのは
           納得できない。
3. 成績の良くない自分 が奨学金がも らえなかったのは当然としても、秀才の彼女までも選考に
           もれたというのは、信じられない。
⑧  ...がちであるが、やは り...(べき)で あろう
             '.....is
            liable/tend to ...., but one should probably .....'
        
1. これは、「女性問 題」と訳しがちであるが、やはり、「女性に関する論争点」とでもすべきであろう。
2. 休みが始まるとたいていのんびりしがちであるが、やはり、毎日きちっと勉強すべきであろう。
3. こういう問題はよく見逃しがちであるが、やはり、良心的に対応すべきであろう。
⑨ こう見てくると、...ということが分かる
             'Looking
            at this way, we can understand .....'
        
1. こう見てくると、翻訳者は未だに新しい用語・表現を作り出す役割を持っていることが分かる。
2. こう見てくると、一見簡単そうに見える問題でも意外と根が深いことが分かる。
3. こう見てくると、一概にカナダ人の男はみな頼りないとは言えないことが分かる。
⑩  いかに...かが(かなり)...なければ分からない
             'One
            does not understand how ..... unless one .....
            (considerably)' 
        
1. 我々が現在使っている、外来の語彙の訳語が、いかに本来の意味からかけ離れているかが実際に
           原語をかなり修得してみなければ分からない。
2. いかに研究が大切かがかなり経験を積まなければ分からない。
3. いかにコネが物を言うかはかなり働いてみてからでなければ分からない。
⑪ 最近の傾向としては、...(せ)ずに、...することが多い
             'As
            a recent trend, there are many cases in which ..... without
            ....'
        
1. 最近の傾向としては、漢字を使わずに、カタカナで外来語を表記することが多くなった。
2. 最近の傾向としては、自分の頭で考えずに、マニュアルに頼ることが多くなった。
3. 最近の傾向としては、何か問題があると、我慢をせずに、すぐ別れることが多くなった。
⑫ いかにも...で ~にくい
            
            'Indeed .... it is hard to ....'
        
1. いかにも翻訳的でなじみにくい。
2. いかにも日本的で分かりにくい。
3. いかにも官僚的で話がしにくい。
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演習
I. 本 文を読んで、次の質 問に答えなさい。
① 筆者はなぜ生半可に翻訳など出来ないと思ったのですか。
② 「日本は世界でも有数の翻訳王国である」というのはどういう意味ですか。
③ 翻訳書にはどんな問題がありますか。
④ 最近の翻訳者の仕事が大変なのはなぜですか。
⑤ 差別用語にはどんなものがありますか。
⑥ 筆者がついていけないのはどんなことですか。
⑦ なぜ、「片親」を使わずに「一人親」としたのですか。
⑧ 筆者は翻訳者の役割をどう考えていますか。
⑨ 筆者が翻訳に関して危惧していることは何ですか。
⑩ 最近の傾向として、外来語はどう扱われますか。
⑪ 筆者が将来について心配していることがありますが、それは何ですか。
Ⅱ. この文章の中心的な主題は何でしょうか。
Ⅲ. 翻訳書を読んだ経験を皆で話し合ってみましょう.
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© Norio Ota 2020